Dancing with an Angel

言葉を見つける追いかけるつかまえる

David Bowie 「America」

年相応で、どこから見ても知的な紳士。

華奢なのに、スーツが似合ってます。

(1930年代のバーバリーツイードのスーツとのこと)

ボウイさんがちょっと悲しげな表情で歌う動画を見る度

この曲が気になっていました。

 

2002年5月にニューヨーク・マンハッタンで行われた、

ニューヨークのロビンフッド財団(貧困問題解決に取り組むNPOを支援する助成財団)

が主催するイベントに出演した時の動画です。

 

2001年10月に行われた

同時多発テロのチャリティーコンサート「the Concert for New York City」

でも「“Heroes“」とともにこの歌を歌っています。

 

 

サイモン&ガーファンクルの「アメリカ」(1971年)という曲です。

私は初めて聴きました。

歌詞を読むと、

なぜこのタイミングでこの曲を選んだのか、わかるような気がします。

 

印象的なフレーズ、

「All come to look for America.」

(みんなアメリカを探しにやってきた)のは、

デヴィッド・ボウイもそのひとりでしょう。

 

アメリカという国の根底が揺らぎ、

憧れだったアメリカが、理想だかなんだかわからなくなってしまった自分の心情を重ねて

歌っているように思えました。

 

ニューヨークを目指すバスの中で、

結婚したいくらい好きな女の子が隣に寝ているというのに、

〈僕〉の心は空っぽ。

 

恋人との悲観的な未来を感じさせるストーリーは

そのまま、アメリカへの落胆と戸惑いを物語っているようです。

 

 

終盤の、

“キャシー、僕はもうなんだかわからなくなってしまったよ”

君が寝ているのはわかってたけど、そう言ったんだよ

僕の心は空っぽだよ 痛いんだ 

なぜだかわからないけれど〉

 

この辺りで

何か、思いが込み上げてくるような表情をしています。

 

私には、

「誰もが苦しい。

それでも、歩いて行かなくてはいけない。」

というふうに聞こえてきます。

 

この歌が書かれた時代も

ボウイさんが歌った頃も

現在も、

生きやすい時代などない、と思い知らされます。

 

だからこそ、音楽は必要なのでしょう。